チュアブル錠の設計|噛める硬度と味の両立をどこで決めるか

商品開発

最終更新: 2026年10月15日 | 監修: 天丸製薬 製造技術グループ

チュアブル錠は「水なしで飲める」という分かりやすい利点があり、子供向けや高齢者向けで採用が増えています。ただし設計は普通の錠剤より難しく、硬度と味の両立が常に綱引きになります。本記事では、どこで何が決まるのかを工程順に整理します。

💡 チュアブル錠は、噛み砕けるだけの低い硬度と、崩れずに流通できる強度を同時に満たす必要があります。通常の錠剤は飲み込む前提なので硬くできますが、チュアブルは口の中で砕けなければなりません。一方で柔らかすぎると輸送中に割れます。この幅が狭いため、賦形剤の選択と打錠圧の条件出しが設計の中心になります。味は後から足すのではなく、最初から賦形剤の一部として設計します。

⚡ この記事のポイント

  • 硬度は「噛める」と「割れない」の狭い幅に収める
  • 甘味料は味のためだけでなく、賦形剤として打錠性にも効く
  • 苦味の強い成分は、マスキングで消せる量に限界がある
  • 粒を小さくすると配合できる量が減る。訴求と両立しない場合がある
  • 試作は味の確認が入るため、通常の錠剤より回数が増えやすい

硬度の幅が狭い

錠剤の硬度は、打錠機の圧力で調整します。当社の自社工場ではZP-265というロータリー式打錠機を使っており、圧力と回転速度の組み合わせで硬度を作ります。

通常の錠剤であれば、流通で割れない強度を優先して硬めに設定できます。チュアブルはそれができません。

硬度起きること
高すぎる噛み砕けない。歯が痛い。子供が食べられない
適正🟢 噛める/輸送で割れない
低すぎるボトル内で割れる。粉が出る。欠けた粒が混ざる

この幅に収めるには、賦形剤の選択が効きます。圧縮したときに固まりやすく、口の中では崩れやすい素材を組み合わせます。

甘味料は味だけの役割ではない

チュアブルでよく使われる糖アルコール類は、甘味を付けるだけでなく賦形剤としての役割も担います。口の中で溶けるときに冷涼感が出るものもあり、味の設計要素になります。

ここが設計を難しくします。甘味料の量を変えると、味と同時に打錠性と硬度が変わります。「もう少し甘く」という修正が、硬度の再調整を伴うのです。

  • 甘味を増やす → 賦形剤の比率が変わる → 硬度が変わる → 圧力を再調整
  • 有効成分を増やす → 賦形剤が減る → 固まりにくくなる → 粒を大きくするか配合を下げる
  • 粒を小さくする → 入る量が減る → 1日あたりの粒数が増える

どれか一つだけを動かすことができません。味・硬度・配合量・粒サイズ・1日粒数の5つが連動します。

📋 チュアブルは自社工場で製造しています。設備はこちら

苦味には限界がある

マスキングで消せる苦味には量的な限界があります。アミノ酸、一部のビタミンB群、植物エキスなどは苦味が強く、配合量が増えるほど隠しきれなくなります。

対処は3通りです。

  1. 配合量を下げる──訴求との兼ね合いになります
  2. フレーバーで覆う──柑橘系・ヨーグルト系など、苦味と相性のよい方向を選びます
  3. 剤形を変える──飲み込む錠剤やカプセルなら、味の問題は消えます

子供向けで「続けて飲んでもらうこと」が重要な場合、3番目が最も確実な場合があります。チュアブルにこだわった結果、飲まれない製品になっては意味がありません。企画段階で、なぜチュアブルなのかを確認しておくと判断しやすくなります。

試作は回数が増える

チュアブルの試作は、通常の錠剤より往復が増えます。味の確認という主観的な工程が入るためです。

回数を減らすには、最初の試作で複数パターンを作る方法が有効です。甘味の強弱、フレーバーの方向、粒サイズを変えた数種類を一度に作り、比較して方向を決めます。1種類ずつ確認すると、そのたびに往復が発生します。

また、味の評価は誰が確認するかを先に決めておくと早く進みます。子供向け製品では、実際の年齢層に近い評価者の意見が必要になることがあります。

よくある質問

Q. 子供向けの粒サイズはどのくらいですか?

A. 噛み砕く前提なので、飲み込む錠剤より大きめでも問題ない一方、口に入れたときの違和感が出ない範囲に収めます。粒を小さくすると1粒に入る量が減り、1日の粒数が増えます。摂取のしやすさとのバランスで決めます。

Q. 砂糖を使わずに甘くできますか?

A. 糖アルコールや高甘味度甘味料で対応できます。ただし甘味料は賦形剤としても働くため、種類を変えると打錠条件が変わります。「砂糖不使用」を訴求する場合は、処方設計の段階で方針を決めてください。

Q. 形をハートや星にできますか?

A. 杵と臼を作れば対応できますが、金型費用が別途必要です。また特殊形状は角が欠けやすく、硬度の設定がさらに難しくなります。初回は標準形状で品質を固め、販売が安定してから形を起こす流れが現実的です。

Q. 「身長が伸びる」と書けますか?

A. 書けません。身体の構造への作用にあたり、食品では標ぼうできません。子供向け製品では機能性表示食品の届出もできないため、栄養機能食品の定型文を使う設計が選択肢になります。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

チュアブルは自社工場で製造しています

硬度・味・配合量の綱引きを、試作で詰めながら設計します。子供向け製品の表示方針もあわせてご相談いただけます。

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