最終更新: 2026年10月16日 | 監修: 天丸製薬 製造技術グループ
賞味期限は「だいたい2年くらい」で決めるものではありません。根拠を求められたときに出せる形で設定する必要があります。本記事では、安定性試験をどう設計し、どこまで自社でやり、どこから外部に出すのかを整理します。
💡 賞味期限は、安定性試験のデータをもとに設定します。一定の温度・湿度で保存した製品を定期的に取り出し、外観・含量・微生物などを測って変化を追います。実際の保存期間をそのまま待つ長期試験と、高温高湿で劣化を加速させる加速試験があり、加速試験のデータから長期の挙動を推定する方法が一般的です。分析は外部の試験機関に委託するのが現実的で、成績書が根拠資料になります。
⚡ この記事のポイント
- 賞味期限は安定性試験のデータで設定する。経験則では根拠にならない
- 加速試験で推定し、長期試験で確認する二段構え
- 測る項目は外観・含量・微生物・水分・崩壊など
- 包装形態を変えると試験もやり直しになる
- 分析機器を持たない場合、外部試験機関の成績書が根拠になる
長期試験と加速試験
| 長期試験 | 加速試験 | |
|---|---|---|
| やること | 想定する保存条件で実際に保管 | 高温高湿で劣化を早める |
| 期間 | 設定したい期限と同じかそれ以上 | 数か月程度 |
| 長所 | 実際の条件での結果が得られる | 短期間で傾向がつかめる |
| 短所 | 時間がかかる。発売に間に合わない | 推定であり、そのままでは確定できない |
実務では、加速試験で暫定的に期限を設定して発売し、並行して長期試験を続けて確認する流れが一般的です。長期試験の結果が出た段階で、期限を見直すこともあります。
注意したいのは、加速試験が万能ではない点です。高温で起きる変化と、常温で長期間かけて起きる変化は、必ずしも同じ経路をたどりません。熱に弱い成分では、加速試験の結果が実態より厳しく出ることがあります。
何を測るか
測定項目は製品によって変わりますが、基本は次の通りです。
| 区分 | 項目 | 見ているもの |
|---|---|---|
| 化学的 | 有効成分の含量 | 成分が分解していないか |
| 化学的 | 水分 | 吸湿していないか |
| 物理的 | 外観(色・光沢・斑点) | 変色・劣化の兆候 |
| 物理的 | 硬度・崩壊時間 | 固くなって溶けなくなっていないか |
| 微生物 | 一般生菌数・大腸菌群・カビ酵母 | 保存中に増えていないか |
表示値を謳っている成分については、期限内に表示値を下回らないことが重要です。「ビタミンC 1,000mg配合」と書くなら、賞味期限の時点でも1,000mgが保たれている必要があります。分解する成分では、製造時に余裕を持たせる設計(オーバーエイジ)を検討します。
📋 試験は外部機関に委託しています。品質方針・責任体制
包装を変えたら試験もやり直し
安定性試験は、その包装で保管した結果です。容器が変われば、酸素や水分の入り方が変わるため、データは使い回せません。
- ボトル → 分包:防湿性が上がるため、結果が変わる可能性が高い
- 包材の変更(アルミ蒸着の有無など):同様
- 入数の変更:開封後の消費期間が変わる
- 乾燥剤の有無・種類の変更:吸湿の挙動が変わる
リニューアルで容器を変える際、「中身は同じだから」で試験を省略できないのはこのためです。処方と包装はセットで評価されます。
どこまで自社でやるか
安定性試験には、恒温恒湿の保管設備と、分析のための機器が必要です。
当社は分析機器を自社保有していません。成分分析・微生物検査・重金属検査などは外部の試験機関に委託し、発行された成績書をもって判定しています。自社では外観検査・重量検査・金属検出など、工程内で確認できる項目を担当します。
これは制約であると同時に、利点でもあると考えています。第三者が発行した成績書は、自社測定値よりもお客様に示しやすく、検証もしやすいためです。委託先と試験項目は、ご要望に応じて開示します。
実務的な進め方
- 設定したい期限を決める──販売計画と在庫回転から逆算
- 測定項目を決める──表示値を謳う成分は必須
- 包装を確定させる──試験開始後の変更は差し戻し
- 加速試験を開始──数か月で傾向をつかむ
- 暫定期限を設定して発売──並行して長期試験を継続
- 長期データで確認・必要なら見直し
発売日から逆算する場合、試験期間を工程に組み込んでおく必要があります。処方確定から発売までのスケジュールに、この時間が入っていないケースが少なくありません。
よくある質問
Q. 似た製品のデータを流用できますか?
A. 配合と包装が同じであれば参考になりますが、成分が1つ違えば挙動が変わります。流用の可否は個別に判断します。自社製品のリニューアルで、変更が軽微な場合は範囲を絞って試験することがあります。
Q. 賞味期限は長いほうがよいですか?
A. 在庫リスクの観点では長いほうが有利ですが、長く設定するには相応のデータが必要です。また期限の終盤で表示値を割らない設計が求められるため、成分の余裕を多く取る=原価が上がる方向に働きます。
Q. 試験費用はどのくらいですか?
A. 測定項目の数と測定点の数で決まります。項目を絞れば抑えられますが、表示値を謳う成分を外すことはできません。見積り時に項目ごとの内訳をご提示します。
Q. 成績書は顧客に見せられますか?
A. ご依頼に応じて発行しています。外部試験機関が発行した成績書であれば、第三者の測定値として示せます。
賞味期限の設計からご相談ください
測定項目の選定、包装との組み合わせ、スケジュールへの組み込みまでご一緒に整理します。
- ✅ 成分分析・微生物検査は外部試験機関に委託
- ✅ 第三者発行の成績書で判定(品質方針)
- ✅ 自社では外観・重量・金属検出を全数確認
- ✅ 初回小ロット100個から、強引な営業なし
関連ページ:品質管理体制 / 品質方針・責任体制 / 包装・パッケージサービス
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