最終更新: 2026年10月19日 | 監修: 天丸製薬 品質保証部
設備は買えば揃いますが、手順が守られるかどうかは別の問題です。GMPの考え方で最も地味で、最も差が出るのがここです。本記事では、現場で手順が守られる仕組みを整理します。
💡 製造の品質は、設備の性能ではなく手順が守られる確率で決まります。同じ機械を同じ処方で動かしても、作業者が手順を飛ばせば結果は変わります。これを支えるのは、記録様式・教育・入室手順・相互確認といった仕組みです。人を注意深くさせるのではなく、注意を払わなくても手順どおりになる構造を作るのが実務です。工場見学で清掃の状態を見るのは、この仕組みが働いているかの代理指標になります。
⚡ この記事のポイント
- 設備は買えるが、手順が守られる仕組みは買えない
- 記録様式に例外の記入欄がないと、例外は記録されない
- 相互確認は「2人が見た」ではなく「別の人が独立に見た」
- 教育は実施記録だけでなく、理解の確認まで
- 人数が少ない現場では、手順の単純化が有効
注意力に頼らない
「気をつける」で防げる誤りには限界があります。仕組みで防ぐ方向のほうが安定します。
| 注意に頼る | 仕組みにする |
|---|---|
| 原料を間違えないよう確認する | 秤量時に別の人が原料名とロットを独立に確認 |
| 記録を忘れないようにする | 記録欄が埋まらないと次工程に進めない運用 |
| 清掃を忘れないようにする | 切替手順の中に清掃と確認を組み込む |
| ラベルの貼り間違いに注意 | 品目ごとに包材を区分し、同時に出さない |
右側は、作業者の注意力が落ちても結果が変わりにくい設計です。手順書に「注意する」と書くのは、仕組みがないことの別の表現です。
記録様式が運用を決める
記録が残らない最大の原因は、怠慢ではなく書く欄がないことです。
- 原料を継ぎ足した → 1つしか書けない様式だと、2つ目が消える
- 途中で設備を調整した → 調整内容を書く欄がない
- 前バッチの端数を回した → 記入箇所が決まっていない
- 予定と違う順序で作業した → 順序を書き換える欄がない
いずれも例外的な処理で起きます。通常手順しか想定していない様式では、例外が記録されずに流れます。様式を設計する段階で、例外の記入欄を用意しておくと破綻しにくくなります。
📋 当社の品質体制は品質方針・責任体制に公開しています。
相互確認の意味
秤量や品目の確認では、2人で確認する運用が取られます。ここで形だけになりやすい点があります。
- 🔴 1人が読み上げ、もう1人が「はい」と答える → 独立していない
- 🟢 それぞれが別に原料名とロット番号を読み、照合する → 独立している
前者では、1人目の誤りが2人目に引き継がれます。確認の価値は「別の人が、別に見たこと」から来ます。後から確認者の欄にサインするだけの運用では、同じ問題が起きます。
教育は理解の確認まで
教育記録に「実施日・内容・参加者」だけが残っている場合、伝わったかどうかは分かりません。
確認の方法はいくつかあります。
- 手順の要点を口頭で説明してもらう
- 実作業を見て、手順どおりか確認する
- なぜその手順なのかを説明できるか聞く
3番目が効きます。理由を理解していれば、想定外の状況でも判断を誤りにくくなります。「決まりだから」で覚えた手順は、例外的な状況で飛ばされます。
たとえば金属検出機を包装前に通す理由を理解していれば、アルミ包材の製品で順序を入れ替えるべきでないことが分かります。
少人数の現場で
当社の製造フロアは、通常数名で稼働します。人数が少ない現場では、別の工夫が必要になります。
- 手順を単純にする──工程数が少ないほど飛ばされにくい
- 同時に複数品目を流さない──取り違えの機会そのものを作らない
- 包材と原料を品目単位で区分して出す──物理的に混ざらない
- 記録を工程の途中で止める──後でまとめて書かない
2番目は小規模な製造所の利点でもあります。同時並行が少ないほど、取り違えの経路が減ります。大量生産には向きませんが、品目ごとの管理は明確になります。
よくある質問
Q. 作業者の人数は品質に影響しますか?
A. 人数より、手順と記録の設計が影響します。少人数では同時並行が減るため取り違えの機会が少なくなる一方、相互確認の相手が限られます。どちらの性質も設計で補います。
Q. 手順書は見せてもらえますか?
A. 実物の記録には他社製品の情報が含まれるため制限がありますが、空の様式であれば見学時にご確認いただけます。
Q. 作業者の教育記録はありますか?
A. 実施内容と参加者を記録しています。見学時に運用についてご質問いただければ説明します。
Q. 問題が起きたときはどう扱いますか?
A. 記録して原因を究明し、手順または様式を見直します。作業者の注意不足で終わらせると、同じことが起きるためです。
運用は見学でご確認ください
設備は型式まで公開しています。手順が守られているかは、現場を見ていただくのが確実です。
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